ひがしっぽ動物病院

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コラム

僧帽弁閉鎖不全症

子犬

同義語: 粘液腫様僧帽弁僧帽弁疾患;MMVD、僧帽弁逆流;MR

わんちゃんに多い心臓の弁膜症です。
昔から知られている病気で、多くの研究がされ、多くの薬が使われ、時代とともに変遷を遂げてきています。近年ではACVIM(全米獣医内科学会)が提唱するステージ分類、推奨治療を行うことが多いです。

僧帽弁閉鎖不全症ステージ

簡単にまとめるとこんな感じなんですが、問題はステージCまで(うっ血性心不全の)症状がないことです。つまり、極軽度な症状があったとしても、病院を受診するには至らず、日常生活は普通にしていることも多いということです。

「ウチの子は元気!」の中にB2が潜んでいるかもしれないということです。

もうひとつ厄介なのは病気の進行についてです。

病気進行イメージ

病気の進行のイメージはこんなんじゃないですか?

だんだん悪くなっていくので、重症のCとかDが近づいてきたら、治療しよう!

という感じ。

病気進行イメージ

でも実際は……
こんな感じで、悪くなると急に進行します。しかもそれぞれのステージに、いつなるかはわかりません。

赤の点線は、死亡してしまう場合を表しますが、わんちゃんがこれより前に寿命を迎えるのか、本来の寿命の前に病死してしまうのかも、非常に予想が難しいです。

つい最近、ひとつの検証論文がでました。内容は「ステージB2のワンちゃんに投薬治療を開始して、発症を遅らせることができるか?」(EPICstudy)というものです。

結果は……Yes!でした。

B2から投薬治療を開始することで、B2からCへの期間を、治療しない場合よりも15か月伸ばすというものでした。
ワンちゃんの寿命を13-15年と考えれば、寿命の10分の1の期間、症状の発症を先延ばしにできるということです。人間でいえば、7-8年にあたるでしょうか?
これをさっきのグラフにあてはめると…

病気進行イメージ

グラフが横長になりました。Bの期間が延びているので、Cに移行する前に、あるいはDになる前には、寿命を迎えられる可能性がぐっと高まったと思いませんか?

心不全症状は苦しいです。悪いのは心臓ですが、咳や肺水腫による呼吸困難があらわれます。ワンちゃんは苦しそうで、飼い主さんは見ていられないということもよくあります。
「せめて苦しくないように、、、」「穏やかに旅立ってくれれば…」最期の時を迎える愛犬を前に、飼い主さんからよく聞く言葉です。

心不全症状のないB2の期間を維持できるということは、ワンちゃんも、飼い主さんも、とてもハッピーなことだと強く思います。

これを実現するにはステージB2であることを診断することが重要です。
でも、ステージB2は「(うっ血性心不全の)症状なし」です。あるのは心雑音と心拡大です!

聴診器をあてられる犬

ここでやっと僕らの出番ですね。
受診していただければ、聴診器をあてます。下痢の受診でも、びっこの受診でもあてさせて頂いています。これで心雑音の有無は判定可能です。
心拡大は、レントゲンやエコー(超音波検査)で判定します。この検査は、心雑音があった場合、あとは健康診断でオススメしています。

早期治療が目的の方法や新薬は、今の医療の流れで、これからもどんどん出てくると思います。
そこで併せて大事になってくるのが、早期診断です。
これは僕たちの仕事ですね。新しい検査は高価だったり、時間がかかったりしますが、すべてがそうではありません。
今回の場合、まずは聴診器を当てることから始まります。これには特別料金はもらっていません。時間も長くて1分程度です。痛くもないし、麻酔もいりません。
またうっ血性心不全の症状ではない、心不全症状は、飼い主さんから詳しくお話を聞く(問診)だけでわかることが多いです。

ぜひ一度気軽に御来院ください。
飼い主さんがわんちゃんに望んでいること、意外に簡単にできるかもしれませんよ。