ひがしっぽ動物病院

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コラム

下痢

今回のテーマは下痢です。「下痢」はあくまで症状なので、色々な原因から起こります。
僕が治療の時に考えていることをおりまぜて書いていきます。

下痢を理由に来院されたときにいつも聞くことがあります。

  • いつからですか 何回くらいありますか
  • 形はありますか ティッシュで掴めますか 道路にくっついて残る感じですか
  • フード変更はありましたか 初めてのおやつはないですか
  • お出かけや来客はありましたか
  • よく下痢しますか
  • 嘔吐はないですか

こんなにたたみかけるようには聞きませんよ(笑)
わんちゃん、ねこちゃんの様子を見ながら、いつもの問診、視診、触診をしながら、聞いていきます。
核心的なこと、特徴的なことがあればそれが診断につながることもあります。

動物の一般状態に問題なく、さらに食欲はあって、薬も飲める。
飼い主さんも「そんなに心配じゃないけど、念のため来ました。」というような場合は相談しながらですが、整腸剤や下痢止めで数日経過を見てもらうことが多いです。
もちろん検便で、ジアルジアやコクシジウムなどの原虫がいたり、腸内細菌でいわゆる悪玉菌が増えていたりすれば、抗原虫薬や抗生物質を処方します。
高繊維に調整している消化器病用の缶詰を数日混ぜてもらうこともあります。

元気がないとか食欲がないという場合は、なにか別の病気があって、下痢はその症状のひとつということもあるので、血液検査やレントゲン検査、エコー検査をすすめます。
他の病気がないことを確認したいなぁという感じです。粘液便だったとか時々血が混じるとかのケースでは検査をしておくことが多いです。

異常があれば、次の検査やその治療。なければ上記の治療となります。食欲がない場合は皮下点滴や注射薬を使って、飲み薬は処方せず、翌日や翌々日に受診していただくことが多いです。

そして、意外に?多いのが「この子いつも軟便で」とか「しょっちゅう下痢します」とかの慢性下痢の場合。これは実は厄介です。
あまり医学的な言い方ではないですが、「腸が弱い」とか「フードが合わない」というようなケースから、何か腸の慢性的な病気がある場合も含むからです。

このような「慢性的あるいは再発を繰り返す消化器症状」を、近年では「慢性腸症」と呼ぶことが多くなりました。

慢性腸症の確定診断は、寄生虫感染などの他の原因を消していく除外診断と、内視鏡生検(胃カメラで検査のための腸粘膜壁を採材します)で腸炎の存在を証明する事になります。

慢性腸症を疑ったときの原因を大きく、ざっくり3つに分けます。

  • 食べ物が原因(食物アレルギー、食物不耐症)
  • 腸内細菌が原因(抗菌薬反応性腸症)
  • 腸管の問題(炎症性腸疾患(IBD)、腸リンパ管拡張症)

これらが、単独あるいは重なりあい、その発症程度も様々だけど、結果として腸炎が起こることで、症状として下痢が現れると考えます。
さらに、がつがつ食べているのに下痢して痩せているということなら腫瘍や糖尿病も考えられますし、腹水でお腹が膨らんでいて、低タンパク血症があるなら、重症であり、診断よりもまずは治療を優先する場合もあります。
内視鏡生検は全身麻酔が必要で、費用もかかります。実際にはこれらの原因を想定しつつ、治療も並行していきながら、内視鏡生検の有用性を考慮するという感じになります。

では慢性腸症の治療です。
重症度にもよりますが、まずは食事管理をしていくことが多いです。慢性腸症を対象にした処方食は各メーカーから何種類も出ています。様々な調整がなされていますが、大体、こんな感じになります。

症状、価格、好み、などからよさそうなものを試します。小袋のサンプルがあるものも多いのでお試ししてもらいやすいです。 最も重要なのは食事療法の反応を見ている間は、他の物を与えないということです。
おやつも、人の食べ物も、例えばかさ増しに使っていたキャベツなどもやめます。
とにかく、口にするものを処方食のみにします。

一般的に4-6週間試して効果判定を行うよう言われますが、良いときは数日で効果が認められる場合が多いです。

反応がいまいちだったり、症状が悪化したりする場合は長期投与可能な抗生物質を併用することもあります。寄生虫が検出できていなくても、虫下しを使っておく場合もあります。

まずは「食べ物が原因」、「腸内細菌が原因」の部分をケアしていく感じです。

それでもよくならない場合は、残った「腸管の問題」を確定するため内視鏡生検にすすみ、診断をつけることをおすすめします。診断が、例えば癌なら抗がん剤、リンパ管拡張症やIBDならステロイドというように、治療が異なってくるからです。

また、食物アレルギーは血液で検査できるので、どの段階でも比較的簡単に実施可能です。
ただし、検査の解釈には注意が必要です。細胞レベルでの反応と生体での反応とでは完全に一致しないケースもあるからです。

いかかでしたか。
ひとくちに「下痢」といっても一時的なものから、原因が複雑なもの、癌を疑うケースまで多くの疾患が考えられるということがおわかりいただけたと思います。

特に、「軽度でも慢性的に症状がある」場合は一度御来院ください。
まずはお話を聞かせていただき、一般診察、検便から実施いたします!