ひがしっぽ動物病院

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コラム

皮膚病③ ~治療・ケア編~

それでは皮膚病の第3回です。治療についてトピックスをまとめます。

プロアクティブ療法

プロアクティブ療法

「せっかく調子が良かったのに、また再発した。」「良くなって、薬をやめると再発する」

皮膚病の治療ではよくあります。特に犬アトピー性皮膚炎のように完治が難しい病気では、どうやっていい状態を維持するかがとても重要です。
再発したときに、治療を再開、強化するという治療法をリアクティブ(Reactive)療法といいます。これに対して、皮膚症状の悪化が無くても、再発しないように、定期的に外用剤を塗布するような治療法をプロアクティブ(Proactive)療法といいます。
これは特に全身では無くて、部分的な再発に悩むケースでは効果的で、肘や脇など再発しやすい場所に、例えば毎週土日だけ、外用剤を塗ってもらったりします。
皮膚の外用剤はとてもたくさんあります。ステロイドを含有していることが多く、使い分けも重要です。後々に副作用が出たりしないよう、必ず獣医師の指示を受けて使ってください。

ステロイド剤もアンテドラッグと呼ばれる、投与部位で効果を発揮し、その後、すみやかに分解され、全身性の副作用がでにくいタイプのものがあります。

シャンプー

近年、概念が大きく変わってきたのが、皮膚病に対するシャンプーです。ひと昔前は、抗菌シャンプーでしっかり洗うという感じでしたが、最近はスキンケアを考えたシャンプー治療が重要視されています。

<スキンケアを考えたシャンプー>
  • シャンプー後に保湿する
  • 薬用シャンプーを乱用しない
  • 爪を立ててガシガシ洗わない
  • 乾かしはタオルで十分に拭き取り、ドライヤーは必要最小限にする

ところで、「薬用シャンプー」って言葉がありますが、これは注意が必要です。細菌を殺すものは抗生物質や殺菌消毒剤で、真菌(カビ)を殺すのが抗真菌薬です。皮膚病ではブドウ球菌(細菌)やマラセチア(真菌類)が原因になることが多いので、このような成分が入っていることは問題ありません。しかしながら、「薬用」という言葉は特定の成分に限って使われるわけではないので、例えば、保湿成分をたくさん含んでいて「薬用」シャンプーをうたっているものもあります。「薬用なので菌に効くと思っていた」という飼い主さんは少なくありません。

このように、皮膚病治療のためのシャンプーは、飼い主さんがお家でやっていただくのはなかなかハードルが高いです。当院では、シャンプー治療も行っていますので、困っている場合は御相談ください。(トリミングはお受けしていません。ごめんなさい。)

当院でシャンプー治療の様子を御紹介します。

泡立てネット

シャンプーの泡立てネットです。 洗濯ネットの中にサイコロ状に切ったスポンジを入れています。

泡立てネット

泡立てネットを濡らして、バケツの中でシャンプーの泡をつくります。抗菌シャンプーなども泡立てます。元々泡で出るシャンプーもさらに泡立てたりします。泡がもこもこ出来てくるとちょっと楽しいです(^-^)

シャンプーされるわんちゃん

ブラッシングをして、全体を濡らしたわんちゃんにシャンプーします。症状がある部分から始めます。毛の汚れを落とすというよりは、皮膚に泡立てたシャンプーをすりこむようなイメージでやっています。爪をたてたり、ガシガシこすったりはしません。

乾かすときはできる限りタオルドライを行っています。マイクロファイバー製のタオルなどを使うとかなり効率よく吸水できます。ドライヤーもなるべく短時間で高温風は使わないようにしています。生乾きはよくありませんが、強風と高温は乾燥のもとになってしまいます。

最後に、ふき取りのいらない保湿泡フォームをすりこんで、終了します。

犬アトピー性皮膚炎(CAD)の治療

これは完治が難しい病気です。生涯にわたって症状とお付き合いしていくことになります。

なるべく症状が小さい状態を維持していくのが治療の目標です。
飲み薬では、免疫抑制薬としてステロイドが用いられることが多かったです。ステロイドは良い薬ですが、他の免疫抑制薬と同じで、長期投与では副作用に注意が必要です。ところがCADでは生涯にわたっての投薬が想定されるのでジレンマがありました。
しかしながら、約3年前に新しいお薬が登場し、この問題がかなり解消されました。「オクラシチニブ」というお薬で、このお薬の登場で、CADの治療ガイドラインも変わりました。

犬のかゆみ.comの「犬のかゆみ治療」のページに簡単な記載があります。ステロイドとは違う作用機序で、CADで問題になるかゆみ症状をうまく抑えてくれます。すべての皮膚症状に効果があるわけではありませんが、有効性の高い治療の選択肢が増えたことは喜ばしいです。

皮膚病治療は一筋縄ではいきません。複数の要因が絡んでくることも多いです。投薬もシャンプーもフードもやるけど、なかなかよくならないこともあります。ただ、症状を見極めて、ひとつひとつ丁寧に対処すれば、現状より良くなることが多いのも事実です。根気も時間も費用もかかりますが、皮膚病で苦しむわんちゃんと飼い主さんが少しでも減るようにお手伝いしていきたいと思います。

最後にひとつ紹介させていただいて、3回にわたった皮膚病シリーズを終わります。
「ペットのひふ科」という飼い主さん向けの皮膚科情報サイトがあります。皮膚科・耳科に特化した獣医師チームが監修されている信頼できるサイトです。このチーム主催のセミナーや書籍で、僕の皮膚病に対する考え方も大きくバージョンアップできました(笑)そして、治療効果も実感できることが多いです。何より「正しい知識」が得られます。内容が難しいこともありますが、ぜひ一度御覧ください。facebook やInstagram でも発信されています。