マダニ予防・対策
年末にホームページをリニューアルしました。コラムの更新方法もすこし変わりまして、試しに何か書きたいなと考えていました。春になって予防の季節になりますが、フィラリア予防に比べて、マダニ予防・対策の話って少ないかなと思って選びました。
マダニについて
マダニは山や河川敷、草むらや公園など、広く屋外に生息しています。日本ではキチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニ、シュルツエマダニなど数種類が知られています。分類上は昆虫とは違うグループになります。ちなみにノミは昆虫に分類されます。
幼ダニ→若ダニ→成ダニと吸血しながら成長していきます。春~秋にかけて活動が活発になります。人や動物に食いついた後、数日から長いものでは10日くらい吸血しているそうです。吸血時にバベシア症や日本紅斑熱などさまざまな病気を媒介するので、予防・駆除が重要というわけです。
近年では人と動物の共通の感染症である「重症熱性血小板減少症症候群(SFTS;Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)」の原因ウイルスの媒介が大変問題になっています。
SFTSについてはまだわかっていないことも多く、有効な治療法がありません。犬よりも猫の方が致死率が高いと言われていますが、人の身近な動物として、犬猫での予防や寄生実態の調査が重要視されています。
マダニ駆除
マダニが媒介する病気を予防するためには、「マダニ自体を避ける」、「病気の原因であるウイルスなどを体に入れられないようにする=マダニに吸血させない」 という方法になります。
ちなみに人だと全力で「マダニ自体を避ける」です。
ここまでの2つの図は、厚生労働省のダニ媒介感染症のwebページからもってきました。
他にもたくさんイラストがあってわかりやすいのでぜひ一度のぞいてみてください。
ページには、「虫よけ剤では完全な忌避はできないので過信せず防護手段と組み合わせるように」の記載もありました。
動物では肌の露出を避けることは難しいので、お薬をつかってダニを避ける&駆除する です。
代表的な2つの薬用成分をあげます。
①フィプロニル系
商品名:フロントライン、マイフリーガード、フィプロスポット、ブロードラインなど
タイプ:スポット剤(月1回背中につける)
体に付けたあと、血中には吸収されず、皮脂腺に蓄積され、徐々に放出されます。体に付着したマダニが、移動している間に、お薬に接触することで、駆除します。吸血される前の駆除を狙っているということになります。2週間に1度程度のシャンプーであれば問題ないとされていますが、お薬を付ける前後2日間ずつはシャンプー不可です。薬の性質上、水濡れや汚れとは相性が悪くなってしまいます。1980年代に開発されたお薬で、現在はゴキブリやスズメバチの殺虫剤、農薬・園芸用殺虫剤としても使われています。歴史が長い薬なので、耐性マダニの存在が指摘されていたり、新薬が開発されたりしています。一部の国では使用禁止・終了し、役割を終えています。
②イソオキサゾリン系
商品名:シンパリカ、ネクスガード、クレデリオなど
タイプ:おやつタイプ(月1回食べさせる) ※猫はスポット剤
ここ数年で主力に変わりつつあるお薬です。動物用に開発された成分です。食べたお薬が胃腸から血中に吸収されて効果がでます。つまり、マダニが吸血して、駆除されるということです。吸血前に駆除できないのはスポット剤との違いになります。ただ、この点に関しては、メーカーからきちんと説明がありました。
・マダニが吸血する血液の量は従来薬の3分の1程度
イソオキサゾリン系の前にあった血中に吸収されるタイプのお薬と比べると、マダニが駆除されるまでに吸う血の量は3分の1になっているそうです。ちなみにノミでは10分の1とのことでした。マダニが駆除されるまでの時間は商品にもよりますが8~12時間と説明されています。
・吸血してすぐには病原体は体に入ってこない
ライム病やバベシア症の病原体は、マダニが吸血し始めて24~48時間後から体に入ってくるそうです。つまり、それまでにマダニが駆除できれば、病気も媒介されないことになります。
飲み薬には吸血されなければ効かないというデメリットはありますが、薬の効果、利便性、安全性などがメリットとして上回るかと感じています。メーカーの説明からは媒介感染症の感染リスク自体も極めて小さいんじゃないかと思っています。
いつ予防するか?
マダニが活動している時期には予防が推奨されます。当院(千葉県)では、3月から10月とお話ししています。
マダニは野生動物にも寄生します。タヌキやハクビシンは都会の畑などでも目撃されていますよね。
SFTSをとりあげたテレビ番組で、マダニの捕獲方法をみたことがあります。なんと、河川敷の草むらで白いシーツを何回か振るだけです。それだけでマダニがシーツにくっついていました。
山には行かないし、草むらには入らないという場合はマダニが寄生するリスクは小さいかもしれませんが、意外と身近に生息しているともいえるのではないでしょうか?
各種予防に追加して、「マダニの予防まで大変!」と思った飼い主さんもおられるのではないでしょうか(;^_^A ただ、わざわざ(?)「新しくマダニ予防を始めなきゃ!」は少ないかと思われます。
と言うのも、近年のフィラリア予防薬は、フィラリア・マダニ・ノミ・おなかの虫を駆除、予防できるオールインワンタイプが主流になっているからです。
ですので、例えば、こんな風にフィラリア予防が始まる前だけ、マダニ駆除薬を使えば、予防は完璧です!
以上、マダニについて書きました。予防についても、飼い主さんのお考えや、生活環境にあわせて、御提案していますのでお気軽に御相談ください。最後ににリンクをはっておきます。かわいいイラストたっぷりです。
、、、はじめにリンクをはっちゃえば、このコラムいらなかったのかも!!??