歯科検査?治療?
獣医歯科の大きなハードルのひとつに、「麻酔をかけないと検査も治療もできない」というのがあります。このハードルは僕らの努力ではどうにもなりません。(「獣医歯科」とか「他の診療科」という表現を使っていきますが、ウチは歯科専門ではないいですし、診療科を分けてもいません。あくまで、僕の頭の中の話です)
他の診療科では通常は、
検査 → 診断・治療計画 → 飼い主さんにお話 → 治療
ですが、
歯科では一般的に
想定を飼い主さんにお話 → 麻酔下での検査・診断・治療選択・治療
となります。
麻酔後に、検査と治療をいっぺんに済ませてしまうので、検査結果も事後報告になってしまいます。
また、事前には想定でお話しするので、いろいろなパターンをお伝えする必要性があります。飼い主さんには内容や費用がわかりにくくなってしまいます。
これは、麻酔を1回で済ませたいという多くの飼い主さんの要望と獣医師の義務感?からの慣習みたいなものだと思います。
ただ、最近は、これにあんまりこだわらないほうがいいのかもなと感じています。
検査結果をもとに治療プランを飼い主さんにお話しして、治療を選ぶという当然の流れを、歯科でもやった場合のメリットとデメリットをあげます。
【メリット】
・検査結果を飼い主さんと共有できる
・残せる歯、残すための方法、抜かなければいけない歯、費用、術後管理など具体的な内容を治療前にお話しできる(他の診療科では当然)
・1回の麻酔時間が減る
【デメリット】
・麻酔回数が増える
・費用総額は上がる(かもしれない)
麻酔の「時間が減るメリット」と「回数が増えるデメリット」はどっちが大きいか難しいところです。一般的には1回の時間が短いほうが患者さんへの負担は少ないと考えられています。
また、他の診療科の手術時間と比較したときに、歯科手術は断トツで、1回あたりの時間が長いそうです。歯科だけの当たり前を見直す流れはここにもあって、「猫の全顎抜歯」のような長時間の手術は2回にわける獣医師が増えている印象があります。
総合して考えると、メリットのほうが大きいのかなと考えています。
最近は、僕も、分ける方法を選択肢のひとつとして、お話しています。
飼い主さんからは、「麻酔は1回で」の気持ちを感じることのほうが多いですが(;^_^A
ただ、本当に「1回」になるかは考えなくてはいけません。
歯周病のケアには毎日のホームケアと定期的な動物病院でのケアが必要です。動物病院でのケアは、麻酔をかけた検査・処置になります。残した歯の状態によりますが、また麻酔の機会はどうしてもやってきます。
結局1回で済まないのなら、事前に検査をして、じっくりと治療について検討してもいいんじゃないでしょうか?
実際にどの流れで進めるかは、飼い主さんと話をして決めていくので、ケースバイケースになります。それはちゃんと他の診療科と同じです。お気軽に御相談くださいね。
★★歯科検査や治療について、セカンドオピニオンなどでかかりつけ以外を受診される飼い主さんもおられるかと思います。歯科用レントゲンをとるのか、定期治療を想定しているのか、その間隔はどれくらいか、、、よく話を聞いて、決めてあげてください。★★
私事ですが、先日、比較歯科学研究会主催の臨床歯科診断学の認定試験に合格しました。
講義、実習、課題提出、発表、試験と結構がっちりした研修コースでした。
社会に出てこの齢になっても(なったから?)、なにかが形として結果が出て、認められるというのは、うれしいものです。
認定されたから突然なにかができるようになるわけではありません。
これからも精進してまいります。