皮膚病
皮膚病は動物病院で見ることが多い病気です。原因も多いです。
まとめるには膨大な量なので、ずっと躊躇していました。
今回、手をつけることに決めたのは2つの理由があります。
1つは治療概念が変わってきたからです。新しいお薬や考え方が出てきて、皮膚病の治療はどんどん改良されています。
2つ目は正しい情報をお伝えしたいからです。インターネットに色々な情報があふれ、日々の診療で実際にそういった情報に惑わされて、困っている飼い主さんやわんちゃんに出会うことも出てきました。動物病院で獣医師が情報を発信することで、このようなケースを少しでも減らせたらいいなと思っています。
よくあるケースや、間違えられやすいポイントに重点を置いて、なるべく簡単に書いていこうと思います。
まずは皮膚の構造です。
病気についての知識も大切ですが、「正常な皮膚」について知らないことも多いんじゃないかと思います
表皮-真皮-皮下組織という3層からなります。1層ずつ簡単に説明します。お肌の手入れや化粧品の話にもよく出てくる言葉がたくさん登場します。
表皮
表皮は5層からなります。深い方から、基底膜-基底層-有棘層-顆粒層-角質層と呼ばれます。レンガを積み上げたように細胞が密着しています。ちなみに犬の表皮は人より(特に角質層が)うすく、1/3くらいの厚さしかありません。角質をつくる角質細胞と角質細胞の間にはセラミドなどの角質間脂質が存在し、角質細胞同士をつなぎとめています
この脂質と細胞の層構造は「ラメラ(構造)」と呼ばれています。最近、CMでも耳にするようになりました。この層は水分を保持する機能を持ち、保湿やスキンバリアに非常に重要な役割を果たします。
基底層の細胞が分化しながら表面に上がっていき、角質として皮膚からフケとして剥がれ落ちるまでの周期が「ターンオーバー」で犬では21日と言われます。(人は28日だそうです。)
真皮
コラーゲンなどの線維質が豊富で皮膚の弾力やしなやかさを作ります。
線維間にはヒアルロン酸などが存在し、線維を支えるとともに、保湿も担います。
皮下組織
主に脂肪組織から成ります。クッションの役割や体温保持の働きがあります。
複雑な構造だと思いませんか?皮膚は様々な役割や機能を持っていますが、それはいろいろな細胞や線維に支えられたものだと言えます。
ではここでクイズです。小型犬や猫の場合、皮膚は体重の約何%を占めるでしょうか?
正解は約20%です。中~大型犬では10-15%くらいと言われます。ちなみに最大の臓器である肝臓は体重の2-3%と言われていますので、皮膚の占める割合の大きさがわかると思います。
そんな皮膚ですが主な構成成分はタンパク質です。これは筋肉や内臓や血液細胞も同じです。食事で摂取したタンパク質の約30%が皮膚で利用されます。またセラミドの合成などにはビタミンB群が重要です。その他微量元素(亜鉛や銅など)もターンオーバーの維持に必要です。皮膚の維持にはたくさんの栄養が必要ですが、直接的に生命維持には関わっていません。例えば、病気で長期的に食べている量が少なかったりするケースでは、体に入ってくる栄養やカロリーが足りなくなります。少ないカロリーが優先的に使われるのは心臓や脳です。結果として、体重減少とともに皮膚状態が悪くなったり、毛もバサバサになったりします。正常な皮膚の維持には「バランスの取れたフードを十分に食べる」ということはものすごく重要なんです。
ひとつ実際例を紹介します。
なんとなくかゆみがあるというチワワちゃん。他の病院でも「アレルギーが関与しているかもね」と指摘を受けていたそうです。皮膚にはひどい脱毛や炎症はありません。ノミダニの予防もされています。フードは市販の総合栄養食のみとのことでした。かゆみもものすごくひどいわけではない、、、、、
このチワワちゃんはアレルギー検査を御希望されました。ただ、採血するとひどい高脂血症でした。飼い主さんに改めてお伺いすると、「おやつや人の食べ物を与えている」とお話が聞けました(;^_^Aアレルギー検査は陰性。おやつをやめて、皮膚用の総合栄養食にしたところ、かゆみはなくなりました。
人間も食生活が乱れると、口内炎が出来たり肌があれたりしますが、このチワワちゃんもなにかしら、食べ物や栄養が関係していたのかもしれません。検査やお薬を試す前に、食べ物の見直しをするのは、皮膚病の場合は特に重要です。
それでは、次から、皮膚病について書いていきます。2回くらいでまとめるようにがんばります。すこし時間がかかりそうです(;´Д`) それまでの間、、、ゾエティスという皮膚病のお薬も取り扱っている企業が、皮膚病の症状として多い「かゆみ」について解説しているサイトがあります。かわいいページで、内容もとてもわかりやすいです。下のバナーからジャンプできますので、ぜひ御覧ください。