先日、スタッフと一緒に高齢動物のケアに関するセミナーに参加してきました。
わんちゃん・ねこちゃんの寿命が伸びるのに伴い、高齢時には、いわゆる介護が必要になるケースも増えています。今回のセミナーでは、獣医療としてできることはなにか、また、動物病院・スタッフとしてどんなお手伝いができるか、とても得るものが多かったです。
今回は、そのセミナーの一部を、スタッフがまとめてくれました。
是非、御一読ください。
突然ですが...
お家のわんちゃんで、こんなことありませんか?
実は、これらは “認知症” の症状なんです。
今回は、私、動物看護師の若月が認知症について、少しお話させていただきます。
「うちの子は若いから大丈夫」、「年は取っているけど、まだボケていないから」と思っている飼い主様にも、これから先のわんちゃんとの生活がずっと楽しいものであるように、一緒に考えていただけたらうれしいです。
また、もう少し詳しく知りたい方は、認知症を診断するためのチェックリストが院内にございますので、お気軽に御来院ください!
正確には「認知機能不全症候群」と言います。いわゆる「ぼけ」とか「痴呆」とか言われるものです。原因は明らかではない部分も多いのですが、フリーラジカルという物質が脳の細胞などを壊してしまう為と言われています。この結果、様々な障害が出ることで冒頭のような症状(※1)が表われます。また、徐々に進行してしまいます。はじめは、症状が現れていても“この子は年だから”と、見過ごされ、進行してから夜鳴きや排泄の問題で困ってしまうことも多くあります。“8歳以上の5頭に1頭は認知機能が低下している”、“年を重ねるとみんな認知症になる”という報告も出ているそうです。
犬 | 猫 |
---|---|
11~12歳の約28% | 11~14歳の約30% |
15~16歳の約68% | 15~16歳の約50% |
これは、各年齢で認知機能低下の兆候や症状が1つ以上ある子の割合です。
これを見ると15歳以上の約半数に何かしらの症状が表われていますね。
少し前までは、日本犬(柴犬など)に多いと言われていました。
しかし、最近の研究では “日本犬だから認知症になりやすい” というわけではないという結果も出ているようです。ちなみに海外の研究ではマルチーズやヨークシャーテリアに多いという報告があります。
なぜ、そのような結果がでるのか、はっきりと分かっていないようですが、命に関わるような大きな病気が少なく、長生きが多い犬種だからではないかと言われたりしています。
残念ながら、症状を確実に抑える治療法はありません。これはヒトでも同じですね。
しかし、最近、ヒトの認知症では“運動”と“栄養学的介入”が良いと言われています。これはわんちゃんでも同じだろうと考えられていて、高齢でも適度な散歩や遊びを続けること、サプリメントをとりいれることが積極的に行われるようになってきました。また、生活環境を変えることで、わんちゃんと飼い主様がお互いに生活しやすい環境を作っていくことも大切です。治らない病気だからこそ、早期発見・早期介入を考えていきましょう!!(※2)
ちなみに、今から28年前の1990年の平均寿命はわんちゃんは8.6歳。ねこちゃんは5.1歳だったそうです。
それが、最近の調査では、わんちゃんは13~14歳。ねこちゃんでは(外猫)11歳、(完全室内飼い)15歳という結果がでています。また、検査技術やお薬の開発はどんどん進歩しているので、寿命はもう少し伸びそうだとも言われています。せっかく、わんちゃん、ねこちゃんと過ごせる時間が延びているのなら、健康で楽しい生活が続くようにしていきたいですね!(*^_^*)
(※1)認知症の症状はDISHAの5兆候といって次の5つに分類されます。
それぞれの具体例が挙げられたものがチェックリストになっています。当院にもございますので御気軽にお申し付けください。
(※2)実際は、例えば夜鳴きなどで、飼い主様が困り果てて来院される場合も多いです。そのときには、ある程度、迅速で有効性の高い介入が必要になるため、お薬を用います。イメージとしては睡眠導入薬、弱い麻酔薬、
抗不安薬といったようなものです。効果が求められる場面ですが、匙加減が難しい薬の処方になります。そのリスクを避けるためにも早期介入は重要です。是非お気軽に、早い段階で御相談ください。