猫の腎臓病ガイドライン-iCatCare2026- と皮下点滴と 腎臓病用処方食
2026年9月3日に iCatCare(International Cat Care)という団体から、猫の慢性腎臓病(CKD)のガイドラインが発表されました。位置づけとしては2016年のISFM(International Society of Feline Medicine)版からの10年ぶりのアップデートという感じみたいです。Journal of Feline Medicine and Surgeryにオンライン公開されています。
こういうガイドライン、かなり長いんですが、最近は、AIに要約してもらって、気になったところはがんばって読む をやっています。
読んでみて3つのトピックスについて書きました。①はちょっと獣医師寄りの話かもしれません。
中盤のフードのイラストの前後の②皮下点滴、③腎臓病用処方食 だけ読んでもらっても大丈夫です(;^_^A
今回のガイドラインでは、IRISのステージングを使いながら、そこに臨床情報をかさねていく、CKDをひとつの数字だけで見ない、合併症や併存疾患、環境やQOLや介護ケアまで含めて考えるという方向性になっているようです。あ、もちろんAIM製剤についての記載はまだないです。
それではいきましょう! 
①CKD-MBDの記載
CKDに伴うミネラル代謝異常はヒトではCKD-MBD;chronic kidney disease – mineral and bone disorder として認識され病態や治療について体系的に記載があります。
CKDに関連する検査項目はクレアチニン、SDMA、血圧、尿比重、尿たんぱくなどがあります。ミネラル代謝に関連するものとしては、リン、カルシウム、カリウム、FGFなどがあります。これらが複雑に関係し、
それが今回個々の項目の評価だけでなく、それぞれの異常が相互に関連して起こる全身性のミネラル代謝異常=CKD-MBDとしてとらえましょうということが示されたということです。
測定した項目数値+体重減少+食事量+QOLを一体としてみることが強調された感じです。
「クレアチニンの数値」、「SDMAでステージング」、「FGF23が高いか低いか」、、、などを個々の項目だけで評価するのではなく、検査ででた数値、一般状態、症状などを総合的に評価して、じゃあ今、なにが起こっていて、どこのケアをすれば状態がよくなるのかを、全体把握・体系理解しましょうという感じ。かんたんなことではないけれど、現実的・臨床的だなぁと感じます。
CKDのねこちゃんはたくさんいますが、それぞれにあわせた検査やケアがますます重要になりそうです。

②皮下点滴について
CKDでは腎機能が低下します。腎臓の大事な機能である「尿をつくる」のが上手にできなくなります。
血液を濾過していらないものだけ尿として捨てていたのが、からだに必要な水分も一緒に捨ててしまうことになります。脱水傾向になりますので、腎機能が落ちると尿量が増え、補うために飲水も増えます。多飲多尿の症状ですね。
CKDでは上記のミネラル異常や脱水のほかに貧血や高血圧などの症状も出ることがあります。これらの不調が食欲低下につながると、飲水だけでは補えなくなることが多いので、皮下点滴を選択することがあります。
CKD=皮下点滴のようなイメージができてしまいますが、今回のガイドラインでは、皮下点滴がCKDの治療ではなく、脱水改善の手段として明確に位置付けられています。
つまり、ねこちゃんがしっかり食べられていれば皮下点滴は不要になるし、飲水をうながす工夫、食欲を刺激するケアをして、ねこちゃんが自分でたべられる治療をして、それでも脱水傾向にあるなら、その改善のために皮下点滴を選択するということです。点滴量や頻度は、そのねこちゃんが実際にどの程度水分を維持できているかに合わせるということです。
ここもやっぱり全体把握・体系理解、現実的・臨床的で、まさに、ねこを診るってことだなぁと感じます。

③腎臓用処方食について
腎臓病処方食(リン制限食)を与えるケースがあると思います。今回のガイドラインでも①のCKD-MBDと関連して記載があります。
ここで、ちょっとガイドラインから離れまして、、、、
現場では、猫ちゃんが処方食を食べないことってよくあります。一般食と混ぜると食べるというのも多いです。
そこで、出てくる「混ぜて与えていても効果はありますか?」という疑問。
これへのひとつの答えは、、、
リン制限食を100%にできなくても、食べる量の半分以上をリン制限食にできた猫では、一般食だけの猫より
長生きできそうだよ。
2022年に発表された51頭のCKDステージ3,4の猫ちゃんでの論文です。
論文自体は腎臓の石灰化について書かれたもので、今回のガイドラインでも引用されています。
この論文では、
ちゃんとしたリン制限食を
A. 食べていない猫、
B. 一般食との混合割合50%未満の猫、
C. 一般食との混合割合50%以上の猫
の3つにわけてみると、C.の猫は、A.の猫と比べて、長く生きていた、という結果を示しています。
②と関連して、食べない猫では腎臓病処方食にこだわる必要はない
のはもちろんだけど、
半分でもリン制限食にできれば恩恵はあるってことになるかと思います。
蛇足ですが、使われているのは”ちゃんとした”リン制限食です。また、食べている量(摂取しているカロリー)が著しく少なければ同じ結果にはならないと思います。
あと、食べればいいってわけでもなく、リン制限食にいつ切り替えるのか、どれくらいの制限が適切か、というのは、①との関連もあるし、まさにケースバイケースになります。

目の前の動物を診る。病態をとらえる。当たり前だけど難しいことです。
CKDみたいに、昔から知られている、よく遭遇する病気でも、ひとくくりにしちゃいけないと改めて感じました。
たとえ、新薬が出たとしても、です。