歯周病ガイドラインの話②―猫の慢性歯肉口内炎アップデート
- 2026年10月27日
- 猫,歯周病・歯と口の病気,未分類
2019年の猫の慢性歯肉口内炎のコラムから
7年たったわけですが、残念ながら厄介な病気であることに変わりありません。
ただ、今回のWSAVAのガイドラインでずいぶん整理されたので、アップデートということでお届けします。
なお、冒頭の2019年のコラムで、呼び方を「尾側口内炎に統一しようという動きがあります」とあるのですが、あまり広まった実感はありません(-_-;)
ガイドライン中の表記は、Feline chronic gingivostomatitis で、FCGSと略されています。
なのでこのコラムではFCGSと書くことにします。ちなみに、直訳は、猫の慢性歯肉口内炎となります(;’∀’)
アップデートとはいうものの、すごく新しい点があるわけではないです。
これまでの報告、文献をきれいにまとめてくれた、まさに、ガイドライン。
その中から3点お伝えします。
①FCGSは単なる歯肉炎・歯周病ではない
改めてですが、FCGSは非常に疼痛の強い免疫介在性の口腔粘膜の炎症疾患です。
尾側粘膜(あーんと口を開けて一番奥、口の中の口角部分です)の炎症が特徴です。
右の図は、実際のねこちゃんの写真をイラスト加工したものです。
下の歯は残っていませんが、尾側粘膜の炎症がよくわかると思います。
単純な歯肉炎・歯周炎とは別疾患として扱うよう記載され、また、食道への炎症の波及にも言及し、全身的な免疫・炎症疾患の一部として、口腔病変が強く出るというような表現もしています。
FCGSの診断には特徴的な臨床症状が十分根拠になるとしつつ、
他の口腔内疾患や単純な歯肉炎との鑑別には、詳細な口腔内精査と全顎レントゲン検査が必須である とも書かれています。
②治療の中心は抜歯
薬での治療は長期的には良い結果になりにくく、抜歯±追加の内科治療が現在の標準的治療としています。
ただ、抜歯については
・炎症が奥歯(臼歯)周囲だけであければ、奥歯のみ抜歯(全臼歯抜歯)でも良化が期待できる
・口の前の方にまで炎症が広がっていれば全顎抜歯を考える
というように整理されました。
抜歯は飼い主さんが決断するのに、ハードルがやや高い治療ではあります。
十分な説明をして理解をいただいてから実施します。
手術時は、根っこだけ残っている歯がないかもレントゲン検査し、あれば取り除きます。
また、残根させないように、丁寧に抜歯します。
術後の疼痛管理もしっかり行います。
③難治性FCGSの位置づけ
奥歯の抜歯でも良化がないものが30%程度存在するとし、refractory FCGS; 難治性FCGS として定義しました。
抜歯後、数週間、必要なら内科治療を行っても、強い炎症が残るものは難治性FCGSとして対応していくということです。
難治性FCGSの治療目標は、
・再発をできる限りコントロールすること
・疼痛管理すること
・良好なQOLを維持すること
としています。そのための薬剤や治療法についても整理されました。
インターフェロンとシクロスポリンの使い方に目新しいものがありました✨
実用できるかは難しいところもある・・・

現場では、抜歯をしてすぐに良くなるねこちゃんもいれば、そうでないケースもあります。
少し時間をかけてよくなっていくねこちゃんもいれば、よくならなかったり、再発したりするケースもあります。炎症が残っているのに、がつがつフードを食べるようになって、体重が増えるねこちゃんもいます。
よくならないときは、自分の抜歯がわるかったんじゃないか、、抜歯後の残根を見逃しているんじゃないか、、不安になることもあります。
今回のガイドラインには勇気をもらいました。
難治性FCGSが30%もある、、、
それでもFCGSには抜歯を選択し、良化がなければ内科を併用する、そうやって、病気自体は治せなくても、ねこちゃんの状態を良くしていきましょう!
そういうメッセージを勝手に受け取りました(๑و•̀ω•́)و✧
抜歯はかわいそうという感覚はとてもよくわかります。
なのでこのガイドラインは決断の助けにもなるかと思います。
同時に、ガイドラインはあくまでガイドライン。目の前のねこちゃん、飼い主さんによりそいながら、少しでもFCGSで苦しむ ねこちゃんが減らせるように、知識を蓄え、技術をみがき、日々精進!がんばっていきます!
蛇足ですが、「口内炎」って言葉はすごく身近で、なんとなく軽症なイメージがあるので、
FCGSに口内炎って用語を使うのはミスマッチだと思ってます。
「あ、口内炎か ε-(´∀`*)ホッ」みたいになっちゃう飼い主さんもおられるんで、、、
